合成の誤謬(ごびゅう)
稲葉 輝彦
少し前であるが、出勤前にズームイン!!SUPERを見ていると、辛坊キャスター
が面白い解説をしていた。「合成の誤謬」である。100円のネクタイを買った
という話題をもとに。
合成の誤謬は、経済学でよく使われる言葉らしい。要するに、部分の真理や理
屈は全体の真理や理屈とは限らないということである。例えば100円ショップ
で買い物をするのは、一円でも安いものを購入する個人の立場としては当然のこ
とであるが、皆が一斉に同じ行動をとると・・・デフレスパイラルへ。
飲み込みが悪いので、少し調べてみると、分かりやすい例え話がネットに掲載
されていた。混雑したコンサートなどで、よく見ようと立ち上がる。これは個人
としては理屈に合った行動。しかし、全員が同じ行動をとると・・・結局、最初
と同様に見えなくなる、それ以上に立ち上がって見るだけ疲れることになる。こ
のように、部分の真理は全体の真理ではない場合があるということだ。
この合成の誤謬、少し拡大解釈して考えてみると、身の回りは合成の誤謬だら
けであることに気がつく。かつての私のPTA活動の中でも、今の日常生活の中でも、
そして職場の中でも・・。つまり、全体を構成する各要素(部分)には、それぞ
れ合理的な理屈が存在しそれに納得しているが、全体を通して見ると、各理屈が
通らなくなってしまう現実だ。
ここで、大きな声では言えないが、以前職場で取り組んだISO14001(環境マネ
ジメント)もそうだった。ISOでは、地球環境への負荷を減らすため、ガソリン消
費量を毎月△%削減とあり、その結果公用車の使用の自粛を求めるに至った。こ
れに公用車の運転手は色を成した。同時に、公用車の走行距離が短いこと自体出
先機関としていろいろ問題もあるらしい。早速、矛盾が発生した。
また、こういう取り組みにカンカンになって打ち込む人がいる。困ったもので
ある。お陰で、冗談ではなく、一時期、寒さのため軍手をはめてPCに向かってい
た。
慣れると、キーボードやマウス操作も少し上手くなるが、とにかく能率が悪い。
OA化で、業務能率向上という県の基本方針と、ここでも矛盾が発生。
こうした矛盾、どうしたら解消できるのか考えるが、答えは見つからない。
まともに誰かに聞けば、「それはそれ、これはこれ」と言われそうだ。
答えを見つけた合成の誤謬に至らない事例がある。
それは、お金のない中小企業の異分野連携による売れる商品づくりだ。
売れる商品作りは、「ニーズ収集」、「市場洞察」、「研究開発」、「特許」、
「量産」、「販売促進」・・などさまざまな部分の集合からなる。それぞれの部
分には専門家がいて、例えば、特許では、特許の無い新商品は欠陥商品だという。
先行調査抜きに特許出願しても、○十万円かかるだろう。販売促進では、金型や
量産化に投資したと同じような額を、売り(宣伝・広告、展示会、記念品・・)
のために投資しないと売れませんよという。中小企業に、そんなお金があるか!
まさに矛盾。
1社単独で取り組むと、この矛盾は避けられない。
しかし、それぞれのツボを押さえた各部分の専門家とWIN WINの連携があると・・
例えば、ニーズ収集も、自社で行うと費用と時間がかかるが、売りの現場とWIN
WIN であれば、売れ筋、消費者ニーズ、値頃感など商品開発に直結した情報が入
ってくる。特許においても、最低必要なものは出願しなくてはいけないが、そう
でないものは図面などを内容証明郵便で自分宛に送るとよいそうだ。費用はビー
ルをつけたランチ代程度。これで後の出願者に訴えられても、対応できるらしい。
展示会への効果的な出展方法やアンケートの出し方も、WIN WINの連携があると
専門家からノウハウが流れてくる。宣伝広告のプロも、無料でかなり詳細な企画
提案書を作成してくれる。
何事もWIN WINの連携が、誤謬に至らない最善の策かもしれない。
産・学・官・民の関係においても。
(転載などご遠慮下さいね)
□稲葉輝彦
兵庫県立工業技術センター 工学博士/
ひょうご福祉新産業研究会 世話人/KNS産業クラスター研究会 主査
□ひょうご福祉新産業研究会
http://www.tokokizai.co.jp/hyogo-fsk/
□関西ネットワークシステム(KNS)
http://www.kns.gr.jp/
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