知らなくて良いことは、めったに無い
小原 明男
10年以上前、若き私は暇でした。数人の悪友たちも暇でした。彼らはアクティ
ブな人間だったので、いろんな事にチャレンジし、私も誘われるままに、いろん
な事をやりました。ゴムボートの川下りレースとか、テレビ番組の仮装大賞とか
テニスやスキー、登山等々。とにかく思いつくままに手当たり次第やっていたと
いう感じなのでした。中には気がのらず嫌々やったモノも少なくなかった気がし
ます。
誘われた中には、地元の郷土芸能もありました。鬼の面をかぶって刀を振り回
し踊り狂う「鬼剣舞」というにものに参加していたのです。私はまだ若かったの
ですが、なぜかしらその「鬼剣舞」にえらく惹かれまして、2年間くらい猛然と
練習をした記憶があります。「郷土芸能なんてじじくさい」って同級生なんぞは
見向きもしませんでした。まぁ若いんだから、それはそれで納得できる正常な反
応ですよね。
それから数年後、私はそれまで勤めていた広告会社を辞め、別な街の同業他社
に入社したところ、あるお祭りのポスターデザインコンペがありました。そのお
祭りはなんと「鬼剣舞」の保存団体が一同に集い、数百人で同じ舞を踊るという
地元にしては大きなお祭りです。私は運命を感じずにいられませんでした。
保存会では師匠のことを「庭元」といいます。私は、教えていただいた「庭元
」にポスターで使う写真のモデルをお願いし、撮影をすることにしました。問題
はどんな写真を撮るか?「鬼剣舞」には十数種類の踊りがありまして、その中に
刀をたくさん持って(たしか12本くらいじゃなかったかな〜)1人で舞う踊りが
あります。僕はそれしかないと考え、撮影に挑みました。やはり踊りを知ってい
て、自分なりの魅力をもっている僕としてはこだわりも大きく、ディレクション
にも力が入り、充実した撮影となったのでした。
結果は見事採用。満足のいく仕上がりでした。
あの時、血迷って「鬼剣舞」なんぞ練習しなければ、この時の人脈も無かった
し、仕事も成功しなかったのではないか? などと考えます。これは一例なので
すが、この仕事について思うことが、本当に世の中には知らなくて良いことなん
か無いな〜っということです。
若い頃に経験したことは、今、役に立ち始めています。例えば「スキー場のポ
スター用のイラストを描いてくれ」と言われても、悪友たちと何度もスキー場に
行って来たので、自分なりの印象があるので描けます。僕は出無精なので誘われ
なければ多分やってなかったでしょう。
地元を離れ、悪友たちともなかなか会えなくなってしまったけれど、心の中で
密かに感謝です。そのうちきっと、嫌々やった、仮装大賞の経験も役に立つ時が
くるはず……
□小原明男
ロケット広告制作室 代表
□ケット広告制作室 ADVERTISING ROCKET
TEL.FAX 0197-65-1371
□大人の絵本を紹介
http://akinger.txt-nifty.com/eh/ |